第9話 「最初の旅の始まりの前」





 第1回目の技能試験の日から今日でちょうど十日目である。ルフィーは相変わらず、魔法学
校と、クロードの弓矢学校の両方に通う毎日を送っていた。そして、この日の昼休み、久しぶ
りにシュリットと話をすることとなった。

「ねえねえルフィー! 明日実地研修の話があるらしいよ!」
「へー。そうなの。」
「私の友達から聞いた話だとね、町の外に行って決められた課題をこなすっていうのを2回や
るらしいよ。」
「そうなの。何人くらいで行くんでしょうね。」
「え! この前先生が言っていたよ。私たちのような生徒が5人に先生が1人ついていくんだ
って。」
「5人で行くのね。」
「そうだよ。ねえ、ルフィー! 私と一緒に行かない?」
「そうね。せっかくだから一緒に行きましょうか? でも、勝手に決められるの?」
「大丈夫だよ! 同じような職業の人じゃなくて、バランスが取れていれば、自由に決めてい
いんだって!」
「そうなんですか。じゃあ、その時はよろしくね。」
「こちらこそ! でも、その前に2回目の技能審査があるんだよね。」
「そうね。私は前回あまりよくなかったから、今回は頑張らないとね。」
「私は、前回はクラス4だったの! 今回は3になりたいな!」
「シュリットさん、クラス4取れたの? すごいわね。」
「ルフィーも頑張ってね!」
「じゃあ、そろそろ昼ご飯買いに行きましょうか。」
「いこういこう! レッツゴー!」

2人はいつものように昼食を一緒に食べた。そしてその日の午後、クロードの弓矢教室で・・。
「さて、皆さんも実地研修のことはご存知ですよね?」
「ああ。」
「あ、はい。」
「その、実地研修なのですが、結花さんは前に一度行かれていますので、同じような方と少し
レベルの高い場所にいっていただくことになります。」
「あ、はい。」
「それで、ルフィーさんとブールさんですが、先ほどのお二人の話ですと、それぞれ1人ずつ一
緒に行かれる方が決まっているようですね。」
「ああ、そうだよ。ルフィーもなのか?」
「はい、エルフの魔法使いの方と一緒に行くことにしています。確か1回目の実地試験の日にす
れ違ったはずです。」
「あの元気そうなエルフの女の子か。いいんじゃないか?」
「ところで、ブールさん。ブールさんが一緒に行かれる約束をしている方はどのような方なんで
すか?」
「えーと、人間の戦士だよ。名前はガルフ・ウェイダンっていうやつだけど。」
「そうですか・・・・・。ちょうどいいですね。戦士、魔法使い、弓使い、シーフですから。」
「あ、あとは回復魔法が使える人がいれば完璧ですね。」
「結花さんの言うとおりですね。わかりました。こちらの方で、教会のほうに問い合わせをして
おきます。神官見習の方は探せばいると思いますので。」
「これで、5人決まりってことですね。で、誰がついてくるんでしょうね。」
「あれ? 言いませんでしたっけ? あなたたちの実地研修の担当はわたくしなんですが・・・。」
「そうなのか。初耳だよ。」
「どうやら私がうっかりしていたようですね。まあ、とにかく私が一緒に行くことが決まりまし
たので。なお、明日はここではなく、魔法学校の方で詳しいお話をしますので、ブールさんも、
魔法学校の方に来てください。時間は10時半からです。なお、結花さんは2回目以降の人たち
だけを集めてお話しますので、夕方4時に来てください。それではまた明日。」

クロードの話が終わった。結花は用事があるようですぐに出て行ったが、ブールはすぐには出て
行かなかった。そのブールにルフィーが話し掛ける。

「ブールさん、ガルフさんってどういう方なんですか?」
「ああ、ガルフか。すごくいいやつだよ。戦士っていうと、ちょっと怖そうでごっついやつを思
い浮かべるかも知れないけど、彼はそれとはまるっきり逆だな。見た目は華奢だし、性格も静か
なやつだぜ。でも、戦う才能はけっこうあるみたいだし、力も強いみたいだぜ。」
「そうなんですか。じゃあ、結構頼りになりそうですね。」
「たぶんな。じゃあ、そろそろ行こうか。」
「そうですね。また明日。さようなら。」
「じゃあな。」

その日の夜、宿屋の手伝いが一段落したルフィーにロンスキーが話し掛けてきた。

「ルフィーさん、もうそろそろ実地研修なんですよね?」
「はい、再来週の初めからです。」
「そうなんですか。色々と大変だと思いますが、頑張ってきてくださいね。」
「はい。」
「色々と学ぶことも多いですし、考えさせられることも多いと思いますよ。中には、自分には向
いていないということを悟って、冒険者への道を諦めてしまう人もいるみたいですね。」
「えっ。そんなに大変なものなんですか?」
「いやいや、そういう方もいらっしゃるということですよ。長いことこの仕事をしていますと、
色々な方と話す機会が多いわけですね。だから、あまり気にしすぎなくてもいいですよ。」
「はい。」

二人がそんな話をしていると、ドアが開いた。新しいお客さんがきたようだ。

「いらっしゃい。」
「じゃあ、わたしも仕事に戻りますね。」
「いいですよ。人数も少ないし、今日はもう終わりでいいですよ。」
「わかりました。」

そういうと、ルフィーは自分の部屋へと戻った。
寝間着に着替えて、ルフィーの体には十分すぎるほど大きいベットに横たわる。

「たしかに、大変かもしれないわ。今まで、町の外に出たことなんてないのよね。私も向いてい
ないなんてことにならなければいいんだけど・・。」

先ほどのロンスキーの話を聞いて、ルフィーは自分が本当に冒険者としてやっていけるのかどう
かということについて、改めて考え込んでしまっているようである。


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