第10話 「秘密の部屋」





 翌朝、朝の仕事を終えたルフィーは実地研修の説明を聞くため、魔法学校へと向かった。

「ルフィー! おはよう!」
「おはよう。」

建物に入ったところで、シュリットに出会った。二人で一緒に今日の説明が行われる部屋である、
123B教室へと向かう。すると、ルフィーが他のドアと明らかに違うドアを見つけた。この一帯
の教室のドアは木製の普通のドアなのに、その部屋のドアだけは重厚な金属製。しかも、ドアの前
には蜀台、ドアには何やらわけのわからない文字(おそらく古代文字なのであろう)、紋章などが
刻まれていた。そして、ドアの横の壁には

立入厳禁・ドアにも触れるな

と書かれた張り紙が張られていた。

「ねえ、シュリットさん。このドアってなんだか知ってます?」
「このドア? 知ってるよ! 実はね・・・・」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「そうなの・・・。怖いわね。」

 シュリットの説明はこうだった。このあたりの教室は廊下にあるドアをあけるとさらに中で2つ
に別れていて、片方がA、もう片方がBの部屋になっている。昔はこのあたりは教室ではなく、魔
法学校で教えながら、自らの研究もしている魔術師達の研究室であり、この立入禁止の部屋になっ
ている122号室では今や失われているとされている究極の暗黒魔術の研究が行われていたため、
学生・現在の学校関係者からは忌み嫌われ、今の校長達が中心となりこの部屋を封印してしまった。

「うん。中に入って右側の122Bの部屋でその研究が行われていたらしいんだけど、詳しいこと
はあまり知られていないらしいわ。私が今メインで魔法を教えてもらっている先生がその頃から、
この学校にいるらしくて、授業の合間とかにいろいろ教えてもらったんだけど、とにかく鬼のよう
な人だったらしいの。学生達だけじゃなくて、他の先生からも恐れられていたそうよ。」
「私はあなたほど魔法に詳しくないから・・・。暗黒魔術ってそんなに怖いものなの?」
「怖いなんてものじゃないよ。なにせその人が研究していた究極の暗黒魔術はその魔法に参加した
人以外のほとんど全ての生命を一瞬にして失わせるものだったらしいの。」
「それは怖いわね。」
「一部、狂信的なまでにその先生についていった学生がいたみたいなんだけど、彼らもみんな行方
知れずになってしまったみたいなの。そしてあるとき、その先生は唐突に学校を辞めたらしいわ。」
「それで、この部屋は封印されたわけね。」
「そうなの・・。 あー気持ち悪くなってきた! 早く行こうよ、ルフィー!」
「わかったわ。」



 ルフィーとシュリットが123B教室に入ると、そこには既に二人が椅子に座っていた。一人は
男性、もう一人は女性である。

「おはようございます」
「おはよー!」

 ルフィー達が挨拶をするとその二人も挨拶を返してきた。

「私は、ルフィー・ミリアムといいます。弓使いです。よろしくお願いします。」
「私は、シュリット。 魔法使いよ。 よろしくね!」
「僕は、ガルフ・ウェイダン。 戦士です。 一緒にがんばりましょう。」
「水野伴美。教会で神の道を学んでおります。 どうぞよろしく。」

 指定された時間まではあと5分ちょっとある。その間4人はこれまでどんなことをこの町でし
てきたかなどといった話をしていた。ガルフはルフィーやシュリットと同じ時期にこの町に来て
今まで戦士学校で学んできたようである。一方の伴美は約半年前にこの町の教会に来てプリース
トの修行をはじめたようである。

「半年ですか。じゃあ、私たちよりだいぶ長く勉強しているんですね。」
「はい。しかし、神の道は長く険しいものですから、まだまだ見習いでしかありません。」
「たしか、正式なプリーストとして認められるまでには1年かかるんですよね?」

ガルフが伴美に尋ねると伴美はうなずいて、答えた。

「早い人でもそれくらいはかかるでしょうか。知識だけでも、実践だけでもない幅広いものを、
身に付けてはじめて、一人のプリーストとして神の下にお仕えすることができるのです。」

 そのあとも、4人でしばらく話をしているとクロードが入ってきた。ブールはまだ来ていない。

「はい、皆さん揃ってますね。ブールさんはシーフギルドの方の都合があって、この時間はこち
らには来れないようです。彼には後で、こちらの方から話をしておきますので・・・」

「それでは、実地研修の内容について説明しますね。研修は2回あります。1回目はここから2
日かかる場所に行って、その近辺を探検していただきます。探検自体の制限時間は5日間ですの
で合計で10日弱のものとなります。こちらに関しては探検中も全て私が同行します。」
「次に、2回目なのですが1回目の場所からさらに4日間ほどかかる場所に、この街と同じくら
いの規模の街があります。そこを起点として15日以内にある指令を達成していただきます。な
お、2回目では私はその街にて待機しています。」
「この研修の間、皆さんにはこの携帯端末を持っていただきます。」

そういうとクロードは20センチ角くらいの画面のついた端末と8センチほどの細長い端末4つ
を取り出した。

「この大きい方はパーティーに一つです。誰かが代表して持っていてください。小さい方は各自
が持っていてください。ブールさんには私が渡しておきます。」
「この端末を使って、皆さんに指示を出したり、相互に連絡を取り合ったりしてください。尚、
説明書もつけておきますので、後で各自確認してください。」

ここで、ガルフがクロードに質問をした。

「それで、具体的にはどのような探検をするんですか?」
「ええと、あまり詳しいことはお話できないのですが、概略で説明しますと・・・・。」

その後、しばらくクロードの説明があり、質疑応答も終わった。1回目はいわゆる単純な宝探し
のようなことをするようである。

「それでは、出発は明日の正午となります。噴水広場に集まってください。装備品については、
1回目は必要であると思われるものをこちらからお貸し致します。それではまた明日お会いしま
しょう。」

 いよいよ明日から、ルフィー達の初めての冒険が始まる・・・・・。



第9話へ

第11話へ (現在執筆中)

ルフィーミリアム冒険記の目次へ