第6話 「実戦試験(2)」






あっという間に二匹いたゴブリンのうちの一匹をしとめた結花。しかし、このときゴブリンが
あげたうめき声で、横にいたゴブリンが結花の存在に気づいた。すかさず結花の方を見てくる
ゴブリン。

「あ、気づいたわね。よし、もう一匹。」

 しかし、その後そのゴブリンは意外な行動に出た。いきなり結花に背を向けて、奥の方へと
逃げ出したのである。予想外の行動に、結花はうろたえた。

「あ、え、あれ・・。」

ここで一瞬うろたえたのが結花にとっては致命的であった。右側のゴブリンに夢中になってい
た結花は、左側から迫ってくる四匹のグールの存在に全く気づいていなかったのである。

「あ、うわ。」

瞬く間にグールに接近されてしまう結花。この距離では弓を構えるのは厳しい。通常時なら、
他の武器を持っているであろうが、この試験では弓以外は使ってはいけないのである。よって
いったん間合いを取るしかないのである。グールの移動速度は決して速くなく、それ自体は難
しい事ではないのである。が、しかし、左だけではなく前にもグールがいるので、必然的に右
に移動するしかない。しかし・・・・・・・・。

「あ、みぎ、みぎ・・・・・」
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結花が間合いを取ろうと右側にしばらく移動したところで突然けたたましい音が鳴り、左と前
にいたグールが突然消え去った。

「あ、あれ?」

何が起こったのかわからずうろたえる結花。しかし、その疑問はまもなく解かれることになる。

「ナンバー1 黒崎結花 ゴブリンによる致命的打撃につき失格。得点0.00。」

無機質な音声が響いた。結花はグールとの距離を取ろうと右に移動中、後ろに気を配らなかった
結果、ゴブリンに後ろから大打撃を受けてしまったのである。実際の戦闘だったら重傷であった
であろう。その直後、今度はミュウミュウからの声がした。

「黒崎さん、残念でしたね。それでは弓を持ってこちらに戻ってきてください。そして2番の部
屋に入って待っていてくださいね。」

その頃、ルフィーとブールが待っている部屋では・・・・・・・(こちらは3番の部屋)

「いきなり、実戦を想定っていってもどうしたらいいんでしょうねぇ。」
「確かに、まだ駆け出し以前のうちらに取っちゃ一寸ばっかし難しい試験だよなぁ。」
「ちょっとどころではなく、難しそう。不安だわ。ブールさんはなんか作戦があるの?」
「俺の作戦かい? 作戦っていうほどのものじゃないけど・・・・・とにかく、相手との距離が
重要だと思うぞ。だって、こっちは弓しか使えないんだぜ。その制限がなければ、遠くからは弓
を使って接近したら、ナイフなり何なりで攻撃すればいいんだけどな。」
「私の場合はナイフ使ったことが無いのよ。」
「そうだな。ルフィーは魔法学校だからな。こっちのシーフギルドじゃナイフ、特に懐に忍ばせ
られるような小さめのナイフに関する技術は相当時間を割いて勉強するからな。この技術はシー
フの戦闘では必須だから。」
「ふーん。そうなんだ。魔法学校じゃ武器戦闘は全く勉強しないから。」
「そうなんだよ。で、本題に戻るけど、今日の試験じゃ相手にいかに接近されないかを考えて動
くって事が相当重要だと思うぜ。」
「なるほど。ありがとう。」

その時、3番の部屋に声が聞こえた。

「ブールさん、出番ですよ。」
「おっと、出番か。」
「がんばってきてね。」

 なかなかの理論家であるブール。しかも、それに技術力・判断力もついてきており、先ほどの
結花とはうってかわり(結花はひどすぎるのだが)、順調に獲物をしとめていく。状況が不利に
なると、持ち前の足の速さをいかし、多少のダメージ覚悟で一気に移動するなどの試験ならでは
の捨て身の戦略も駆使し、制限時間の15分間を戦いきった。

「ナンバー2 ブール 制限時間終了 得点43.8 失点 9.1  評価点34.7」
「ブールさん、1回目終わりです。この点数は相当優秀ですよ。弓矢の人は他に比べて条件が悪
いので30点オーバーってめったにでませんから、自信を持っていいですよ。それでは5番の部
屋で待っててください。」
「よっしゃぁ。」

ブールは自らの好成績に相当の喜びを見せながら、結花とは違う部屋に戻っていった。

「あれ? 結花がいない。どうしたんだろう。 もう2回目なのかな?」

同じ部屋で再び待つと思っていたブールは戻ってきた部屋に誰もいないことに一瞬びっくりしな
がらも、すぐにその意味を察知し部屋に用意されている椅子に座って2回目の出番を待つことに
した。その頃3番の部屋では・・・・・・・・・。

「ルフィーさん、お待たせしました。ちょっと片付けに時間がかかりまして。それでは、試験を
開始いたしますので、こちらまでどうぞ。」
「はい。」
「よし、がんばろうっと!」




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