第3話 「弓矢って難しいのね」






 ルフィーとシュリットが魔法学校での勉強始めてからちょうど二週間がたった。この日から、午前中 
は今までどおり魔法学校で授業を受け、午後からはクロードのところに弓矢を学びに行く事になる。 
 
 その日の昼。いつものように二人で昼食を食べていた。  

「ねぇ、ルフィー。今日から弓矢習いに行くんでしょ。」 
「そうです。シュリットさんは午後は何があるんですか?」 
「わたし? 私は魔法の勉強よ。といっても、まだ実際に魔法を使うわけではないみたい。」 
「そうなんだ。結構大変だね。」 
「そうなのよ。魔法って結構派手なものだと思ったんだけど、色々と覚えなきゃいけないことがあって 
さぁ。あーあ。はやく派手に魔法を使いたいなぁ。」 
「まあまあ。」 
「ねぇ、ルフィー。弓矢の教室で新しい友達ができたら紹介してね?」 
「わかったわ。じゃあ、私はそろそろ行くから。」 
 
 そういうとルフィーは、シュリットと別れて町の中央の噴水広場を経由して、久しぶりにクロードの 
冒険者教室へと向かった。クロードの冒険者教室が始まるのは午後1時半。ルフィーはその10分前に 
教室に入ったが、そこにはすでに一人の女性が座っていた。 
 
「こんにちは。」 
「あ、こんにちは。あなたも、弓矢習いに来たんですか?」 
「そうです。私はハーフリングのルフィーミリアム。あなたは?」 
「あ、私は、黒崎結花です。あ、よろしく。」 
「こちらこそ、よろしくおねがいします。」 
 
 二人でしばらく待っていると、クロードが入ってきた。 
 
「こんにちは。あれ、お二人ですか? おかしいですね。もうひとりいるはずなんですけどねぇ。」 
「そうなんですか?」 
「はい、もう一人。あなたと同じハーフリングの男の方がいらっしゃるはずなんですけど。」 
 
 そのとき、慌てた様子で一人の男が入ってきた。 
 
「おっと、遅れちまったな。すまない。」 
「ようやく来ましたか。今日のところは大目に見ますが、明日からはちゃんと来てくださいね。時間厳 
守ですよ。」 
「了解。」 
 
「では、はじめましょうか。まずは、3人それぞれに合った弓を選びましょう。基本的には体の大きさ 
にあわせて選べばいいとおもいます。ここにあるのは、初心者用のものですが他にも力が必要な代わり 
に威力があったり、引くのが簡単で早く打てたり、一度の複数本の矢をセットできたりする弓がありま 
すが、ここらへんは将来自分の弓を買うときに、考えてください。」 
「あ、わたしはこれにします。」 
「えっと、おれはこれだな。」 
「じゃあ、わたしはこれ。」 
 
 三人それぞれ、自分の体の大きさにあわせた弓を選んだ。 
 
「さて、次は矢について簡単に説明しましょうか。まず、最初に矢の材質なんですが、基本的には、木 
、鉄、銅あたりが多いです。さらに値段は高いですが、銀の矢もあります。また、矢には薬を塗ったり 
魔法をかけたりもできるのですが、この辺はまた後で説明します。」 
 
 そのあと三人はクロードから基本的な構え方や矢のセットの仕方など、の基本的な事項を学んだ。そ 
して壁のところに置いてある藁に向かって徐々に距離を取りながら打つ練習をしていた。しかし、初め 
てのため三人とも苦戦しているようである。 
 
「あ、あ、下に落ちちゃった。」 
「黒崎さん、もっと視線を上の方にしてください。最初のうちは皆さん手元を見てしまいがちですが、 
手元を見るのは矢をセットする時だけで、あとは的の方を見ていたほうがいいと思います。」 
「うっ。なぜまっすぐとばないんだ。」 
 
 遅れて入ってきた、ハーフリングの男も苦戦しているようである。そういえば、あの人の名前をまだ 
聞いてなかったなぁ、などと考えながらルフィーも練習をしていた。すると、クロードが彼を呼んだ。 
 
「ブールさん、ちょっとこちらへお願いできますか。」 
「なんですか?」 
「外の的をセットするのを手伝ってほしいのですが。」 
「了解。」 
「では、お二人は中の矢を片付けておいてください。終わったらしばらく休憩にしましょう。」 
「あ、はい。」 
 
 クロードから指導を受けながらの練習が一段落し、しばらく休憩する事になった。 
 
「これで大体片付け終わったわね。」 
「そうね。あ、じゃあ、ここに座りましょうか。」 
 
 ルフィーと黒崎が隅の方にあるイスに座ると、クロードの手伝いが終わったのか、ブールも中に入っ 
てきた。 
「二人は弓専門でやってくつもりなの?」 
「わたしはそのつもり。」 
「あ、わたしもです。」 
「ブールさんは違うんですか?」 
「うん。俺はシーフやるつもりなんだ。で、戦うこともあるだろうから、弓の技術を身につけようと思 
って。」 
「そうなんですか。ということは、普段は戦士学校の方ですか?」 
「いや、違う。シーフの場合は、シーフギルドっていう専門のところがあるからそこで勉強してる。シ 
ーフっていうと、聞こえは悪いけど、一般の人に対して技術は使わないように厳しく教えられてるからさ。」 
「あ、そうなんですか・・・。」 
「そうそう。だから、盗みとかが見つかったら追放される。それを覚悟でやってる奴もいるけど、俺は 
そういうことをするつもりはないから安心してくれ。」 
「いいひとなんですね。」 
 
 そこにクロードが入ってきた。 
 
「皆さん、外の準備ができましたので、持つものを持ってきてください。」 
「さて、的の準備ができたのでやってみましょうか。先ほどまでで、基本的な打ち方はわかったはずですから 
とりあえず、的を狙って打ってみましょう。とりあえず今日は最初なので、自由に打ってみてください。細か 
い技術は明日からやる事にして、気楽な気持ちでどうぞ。」 
「え?」 
「いきなりなんですか?」 
「まあまあ、そんなに緊張せずに、気楽にどうぞ。」 
 
 そういわれたので、とりあえず三人とも一番近い5mの的から狙ってみたが、全くといっていいほど当たら 
なかった。それぞれ七、八十回は打ったが、ブールが4回、黒崎は3回、ルフィーは1回しか当たらなかった 
のである。 
 
「やっぱりむずかしいな。」 
「あ、そうですね。」 
「まあ、今日は最初ですし、そんなに落ち込まないでください。これから詳しく教えていきますから、期間は 
じゅうぶんにありますし。それでは、また明日お会いしましょう」 
「じゃあ、また明日」 
「じゃあな。」 
「あ、さようなら・・。」 
 
 そういうと三人は教室を出ていった。ブールは左の方に、黒崎とルフィーは右の方へと帰っていった。 
 



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