第2話 「クロードとの出会い」






 「あなたがクロードさんですか? 私は、ルフィー・ミリアムと申します。よろしくお願いします」 
 「おお。あなたがルフィーさんですか。実は私はロンスキーさんとは長い付き合いでね。こうやって時々 
 食事をしに来るんですよ。彼の料理はこの町でも評判ですからね。」 
 「そういっていただけると、うれしいですよ。」 
 「で、今あなたの事についてロンスキーさんから少し話を聞いていたんですよ。なんでも、冒険を始 
 めたばっかりで弓の勉強をしたいと。」 
 「はい。そうなんです。」 
 「それはいいですね。どうも、弓使いは目立たないということで敬遠する冒険者の方が多いのですが 
 我々ハーフリングは、他の種族に比べ体格面でのハンディキャップがあるため、戦闘場面における弓 
 矢を始めとする飛び道具による後方支援は戦術上、非常に有効ですから、きっと役立ちますよ。」 
 
 その後もしばらくクロードは弓矢という武器のすばらしさについて淡々と語った。これには、ルフィー 
だけでなく、クロードと話しなれているはずのロンスキーも少々うんざりしていた。そこで、ロンスキー 
が口を開いた。 
 
 「まあ、そこらへんの話は学校でできるだろう。とりあえず、このお嬢ちゃんに学校のことを説明して 
 あげたらどうかね?」 
 「そうだな。確かに少し話しすぎてしまったようだな。もっと具体的な話をしよう。まず、この町の学 
 校は一部の怪しげなものを除いては、町の北にある戦士学校の傘下か、町の南にある魔法学校の傘下に 
 はいっているんだ。それで、冒険者としての基礎知識はその学校で学んでもらう事になる。そして、弓 
 矢に関する事は私のところで学ぶ。そういう形になっているんだ。」 
 「そうなんですか。それで、お金の方はおいくらくらいかかるんですか・・・。」 
 「あ、お金のことはあまり心配しなくてもいいよ。一応基本課程が十週間。実地に出ての研修が六週間 
 なんだけど、合計で370G。これは先に払ってくれてもいいし、学校をでて冒険者として収入を得ら 
 れるようになってから返してくれても構わない。後払いの場合は期限は一年で利息込みで400G。 
 あなたの場合は、後払いの方がいいと思いますね。で、この学校を卒業した人は依頼の斡旋も受けやす 
 くなるから、決して高くないと思うよ。」 
 「うーん。でも、宿代とかもあるし・・・・・。」 
 「よし、もしよかったらうちで働くかい? そうすれば、宿代と食事代はただで構わないよ。クロード 
 の所に行くんだったらの話だけど、どうかな?」 
 「えーと、じゃあそうします。よろしくお願いします。ロンスキーさん、クロードさん。」 
 
 翌朝、ルフィーは町の南にある魔法学校で入学のための手続きを済ませた。クロードの学校は戦闘技術 
を教える学校なのだが、魔法学校側の組合に属していた。まあ、このことは今のルフィーにとっては特に 
関係ないことなのであるが・・・・・・・。 
 
 「今日は土曜日だから、勉強を始めるのは明後日からになるのね。今日と明日は、この町でゆっくりす 
 る事にしましょう。」 
 


 
 −−−−そして、ルフィーが冒険者学校に入学する日が来た。 
 最初の二週間はクロードのところにはいかずに、魔法学校の中で冒険者としての基本を学ぶための授業 
が行われるようである。一日の授業は午前と午後に分かれており、午後の授業が終ったあとはロンスキー 
の店の手伝いをする事になっていた。午前の授業が終ったあと、食事をするために建物の外に出ようとし 
た時、一人のエルフの女性がルフィーに突然話し掛けてきた。 
 
「ねえねえ! お昼いっしょに食べに行こうよ!」 
「ええ、いいですね。 ところであなたは?」 
「わたし? わたしは、シュリットっていうの。まあ、魔法使いの卵ってところかな? よろしくね!」 
「そうなんですか。わたしはルフィーです。弓使いを目指しています。よろしく。」 
「ねぇ、ルフィーはこの世界に来てどのくらいなの?」 
「わたしですか? わたしはまだ一週間もたっていません。」 
「わたしもそうなの! じゃあお互いまだまだ初心者なんだね。」 
「いい冒険者になれるように、頑張りましょう。」 
「うん!」
 
 戦士学校と違い、魔法学校の中には食事ができる施設が無いため、昼休みには必然的に学校の外に行っ 
て食事をしなければならない。ルフィー達がいる魔法学校は町の最南端の海に面したところにあるのだが 
ここフォーブスの南通りは魔法学校を除くといわゆる高級住宅街しかないため他の大通りまで行かなけれ 
ばならない。ルフィーはいったん町の中央の噴水広場に戻ってから北東通りか南西通りの店に行くつもり 
だったのだが、シュリットが通りの左側を指差して行った。 
 
「こっちから行くと近道だよ!」 
「でも、いいの? ここらへんって誰かの家の敷地内だと思うんですけど? あそこにある船だって、い 
かにもお金持ちが趣味で持っている感じの船だとおもうのですが。」 
「大丈夫だよ! だってあそこに壁があるじゃん。あの通りは誰のものでもないと思うよ。」 
「まあ、大丈夫かなぁ。 じゃあ、行きましょうか。」 
「ねぇねぇ、でもなんでこのあたりに店がないのかなぁ? 儲かると思うんだけど、ねぇルフィー?」 
「確かにそうですよね・・・。あ、あそこになんか貼ってありますよ。」 
「あ、なになに? 『この付近への出店を禁ず』だって。 禁止されてるんだ・・。」 
「でも、どうしてでしょうねぇ・・・・。」 
「まあいいよ。だめならだめで買いに行けばいいんだから。」 
 
 こんな会話をしながら、二人は南西通りの方へと向かって歩いていった。 
 南西通りにはたくさんの店があるが、ルフィーもシュリットも通りを少し歩いたことがあるだけで、 
どんな店があるのかといった知識は無かったので、とりあえず適当に歩いてみる事にした。 
 
「たくさん店がありますね。シュリットさんは何が食べたいですか?」 
「わたし? わたしは魚が食べたい!」 
「じゃあ、あの店にしますか? 店先で魚を焼いてますよ。ここは港町だからきっと魚はおいしいでしょ 
うね。」 
「わぁ、おいしそうね!」 
「私は、これとこれにしますね。すみません、これとこれください。」 
 
 ルフィーは店の前のテーブルにおいてあった寿司が4つ乗った皿と、魚のフライを一つとって店のおば 
さんに渡してお金を払った。シュリットは竹串に刺さった焼き魚と、巻き寿司を1本取ったようである。 
二人は、食べる場所を探そうとあたりを見回し、15mくらい先のところにある空き地の方へと向かった。 
 
「じゃあ、ここで食べよっか。」 
「そうしましょう。」 
 
「ねえねえ、ルフィーは弓使いになるって言ってたよね。」 
「そうよ。」 
「じゃあ、魔法学校以外の教室にも行くんだよね。」 
「そう、町の西の方にあるクロードさんって言う人のところにも勉強に行きます。再来週からですけどね。」 
「そうなんだ。」 
 
 二人は食事を終えた後もしばらく話をしてから、学校へと戻った。そして午後の授業が終ったあと、二 
人は一緒に学校を出た。 
 
「ねえ、ルフィーはどこに泊まってるの?」 
「北東の通りの方です。シュリットさんは?」 
「わたしは、魔法学校の隣の建物よ。ほら、あれ。」 
 
 シュリットは振り返って魔法学校の右隣にある三階建ての建物を指差した。 
 
「魔法学校だけに通う人だけが使えるんだって。結構安いし、学校もすぐ近くだからね!」 
「じゃあ、シュリットさんはこれからどこへ行くの?」 
「さんぽ。 ルフィーはどうするの?」 
「私は、泊まっている宿屋の手伝いをするからいいわ。」 
「じゃあ、また明日ね。」 
 



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