第1話 「さあ、始まりだ!」




  C−レムリア最南端の町、フォーブス。南にはべゼット海、町の北と西には大きな山脈が広がっている 
 この町は、学術の町として栄えていた。町には大きな魔法学校や騎士学校はもちろん、アウトローなハッ 
 カーを養成する学校まであった。もちろん、ハッカー学校は裏でひっそりと活動しているのであるが・・ 
 
  この話の主人公である、ハーフリングのアーチャー「ルフィー・ミリアム」の冒険はこの町から始まる 
 のである・・・・・。 
 
 「冒険者としての生活が始まったのはいいけれど、一体何をしたらいいのか全然わからないわ。でも、と 
 りあえずこの格好でこの町を出たら、ひとたまりもないわね。私は小さいし・・・・。とりあえず、仲間 
 を見つけなければいけないでしょうね。仲間を見つけるといったら、やっぱり酒場に行くのが一番ね。」 
 
  そういうと、ルフィーは町の中心から少し北東に行ったところにある酒場兼宿屋「ロンスキー亭」へと 
 はいっていった。なぜ、ここを選んだかといえば、はじめてでよくわからないこの町で、なんとなくこの 
 建物の前を通った時においしそうな匂いがしたからである。それもそのはず、このロンスキー亭は規模と 
 しては普通程度であるが、主人とおかみさんの作る料理の味が評判になり、常に満室に近い状態なのであ 
 る。それでも、ルフィーが店に入ったときは、昼の時間はとうにすぎて、夕食まではまだまだという時間 
 だったため、一階の酒場にはほとんど客はいなかった。 
 
 「いらっしゃい。 お客さん、はじめてかな?」 
 「はい、そうです。」 
 「そうかそうか。だったら、こっちに来なよ。」 
 
  そういって、主人はルフィーをカウンターの方へ手招きした。カウンターに席は8つ。しかし、全て空 
 席であった。 
 
 「お客さん、一人っていうことはまだ始めたばっかりなの? なんていう名前なのかな?」 
 「はい、始めたばっかりです。私はルフィー・ミリアムといいます。よろしく。」 
 「まあ、そんなに緊張しなくていいよ。最初はみんな大変だろうし。でも、この町だったらきっとすぐに 
 仲間が見つかると思うよ。もう少し遅くなれば、ここもお客さんでいっぱいになるし。」 
 「でも、私、このままで大丈夫なのかな。いきなり町の外に出て。」 
 「そんなに心配しなくたって大丈夫だよ。最初はベテランの人と冒険すればすぐになれるさ。この町に来 
 る冒険者は、やさしい人が多いからね。」 
 「そうなんですか?」 
 「みんながみんなってわけじゃないけどね。でも、この町に来る人は比較的優秀な冒険者が多いよ。技術 
 を磨くために、学校に来る人も多いからさ。」 
 「へえ、どんな学校があるんですか?」 
 「結構色々な学校があるよ。大きいのは、町の最北端にある戦士学校と、町の最南端にある魔法学校だけ 
 ど他にも、冒険者基礎学校とか、特定の技術、例えば召還術を学ぶ学校があったり・・・。あと、これは 
 あまりいい話じゃないけど、どうも裏世界の技術を教える学校もあるみたいなんだ。あ、これ。この町の 
 港に届いた果物で作ったジュース。サービスするから、飲んでいきなよ。どうせしばらくこの町にいるつ 
 もりなんでしょ? だったら、泊まってってくれるとうれしいんだけど、どうかな?」 
 
  ルフィーは主人に出された飲み物を飲みながら、しばらく考え、あたりを見まわしてみた。まわりには 
 数こそ少ないもののいろいろな冒険者がいた。そのほとんどが数人の集団で話をしていた。やはり、仲間 
 を見つけることは大事だと思ったが、それ以上にどうやって仲間を見つけるべきかということを考えてい 
 たそして、ルフィーの頭にある考えが浮かんだ。 
 
 「あの、この町にはたくさん学校があるんですよね?」 
 「ああ、そうだが?」 
 「じゃあ、弓矢の学校ってありますか?」 
 「弓矢か・・・・。弓矢の学校って言うのは大きな中にはないな。」 
 「そうなんですか・・・。」 
 「いや、でも実は私の友人が小さな弓矢の教室を開いているぞ。その人は君と同じハーフリングだったは 
 ずだし、そこにいってみたらどうかね?」 
 「わかりました。その方のお名前はなんというんですか?」 
 「クロードという、ハーフリングの男だよ。ロンスキーから紹介されたといえば、すぐわかってもらえる 
 はずだ。」 
 「ありがとうございます。じゃあ、さっそく行ってみますね。」 
 「そうだな。まだこの時間ならあいつもいるはずだから。でも、その前に泊まるかどうか決めて欲しいん 
 だ。もし泊まるんだったら、部屋とかを準備するから。今、女のお客さん少ないからね。」 
 「じゃあ、しばらくお世話になります。よろしくお願いします。」 
 「食事付きで一泊6.5Gね。一週間だと35G。とりあえずしばらくいるつもりだったらさきに二泊 
 分の13Gだけお願いね。あとは、ここを出るときで構わないから。もちろん、明日この町を出る事に 
 なったら、半分は返すから大丈夫だよ。」 
 「はい、13Gです。」 

  ルフィーはロンスキーに13Gを支払うと、彼に書いてもらった簡単な地図と荷物を持って酒場を出 
 た。その地図によるとクロードの学校は、学校が多い町の南側ではなく、住宅や商店などの入り混じっ 
 た町の西側にあるようである。だいたい20分くらい歩いて、西地区のちょうど真ん中あたりに来た。 
 
 「えーと。ここらへんかしらね。」
 
 そういってルフィーはあたりを見回した。すると、普通の民家を少し大きくしたような建物で入り口の 
 ところに 
コズイン・クロード 冒険者教室
 
 という、緑色の看板を見つけた。とりあえず、ルフィーは扉を叩いてみた。 
 コンコンコン 
 すると、中から声が聞こえる。 
 「どなたですか?」 
 「私はルフィー・ミリアムと申します。ロンスキーさんに紹介されて来ました」 
 「ロンスキーさんからですか。わかりました。すみませんが、今はまだ授業中なので、今夜か明日の朝 
 また来て頂けないでしょうか?」 
 「わかりました。今夜の何時ごろがよろしいでしょうか?」 
 「では、夜7時半以降に来てください。9時くらいまではいる予定ですので。」 
 「了解しました。よろしくお願いします。」 
 
  ルフィーは時計を見た。4時半である。ということはまだ3時間ある。そこでルフィーはしばらく町 
 の中を歩き、一度宿に戻って夕食を食べてからもう一度ここに来る事にした。 
 
 「さて、どこから見て回ろうかなぁ・・・・。」 
 
 ルフィーはそういうと、あたりを見回した。どうやらこのあたりは民家が多く、特に見て回るところは 
 無いようなので、一度町の中心の広場に戻る事にした。しばらく歩いて、ルフィーは町の中央の広場の 
 ところまで来た。この広場には大きな噴水がありフォーブスの町の名物の一つになっている。町の中の 
 別の地区へと移動するときは、必ずここを通るため人通りは非常に多い。ルフィーは広場のはずれにあ 
 る立て看板を見た。この立て看板にはフォーブスの町全体の地図が描かれていた。 
 
 「ふーん。ここからだと南西と北東の通りに店が多いみたいね。ロンスキーさんの宿は北東側だったか 
 らとりあえず南西側にいってみようかしら。」 
 
 そういうとルフィーは南西の方に向けて歩いていった。どうやらこの道をずっとまっすぐ進んでいくと 
 港につくようである。とりあえず、少し進んでみた。 
 
 「うーん。酒場とか、宿屋が多いみたい。でも、とりあえずロンスキーさんのところに泊まる事にした 
 から宿屋には用はないわね。」 
 
 もうすこしすすんでいくと、酒場などは少なくなり、道具屋や武器屋などの冒険者向けの店が増えてきた。 
 
 「武器屋は・・・・、とりあえずまだいいわ。道具を買うにしても、まだ何を買っていいのかわからな 
 いし・・・・・。学校でいくらかかるかもわからないから、とりあえず買い物は控えておきましょう。」 
 
  色々とみて回るうちに、6時を少しすぎたのでとりあえずロンスキーさんの店に戻る事にした。店の 
 扉を開けると、先ほどとはうってかわり、かなりの客が飲み食いをしていた。とりあえず、空いた席を 
 見つけようとあたりを見回そうとしたとき、主人の声がした。 
 
 「ルフィーちゃん。待ってたよ。クロードさんがここに来てるんだ。」 
 
  カウンターの方をみてみると、主人の真向かいに1人の男が座っていた。それがハーフリングである 
 ことは、まだ駆け出し中の駆け出しのルフィーでもすぐにわかった。ルフィーは、クロードの隣の席に 
 座って、クロードに向かって挨拶した。 
  
 



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